石川県金沢市で気密測定 2024/07/12
稜です。
2024年7月12日は石川県金沢市で
㈱KUMU工務店さまの現場の
気密測定を行いました。
この特徴的な黒いシートは、
WURTH製の透湿防水シートですね。
性能は勿論のこと、
目立つといいますかカッコいい
シートでもありますよね。
目に留まりやすく記憶にも
残りやすそうなデザインですので、
通行人に対しての宣伝効果も
少なからずあるのではないでしょうか。
玄関ドアはユダ木工の木製開き戸。
木の味わいが深いデザインで、
これにより玄関の雰囲気が
かなり変わる印象があります。
経験上、YKKやリクシル製などの
玄関ドア(開き戸)と比較すると
気密性はやや低い気がしますが、
果たして今回はどうでしょうか。
中に上がります。
屋根・壁の断熱材は共に
セルロースファイバー。
外壁側の防水シートと同じく
WURTH製の気密シートが
施工されていますね。
所謂可変調湿シートであり、
室内側やシートの内側の湿度を
コントロールする事が出来ます。
さらに、シートのジョイント部分には
こちらもWURTH製の気密テープである
ユラソールが使用されています。
強粘着で有名な気密テープで、
同社のシートとの組み合わせであれば
相性は言わずもがなでしょう。
現場には大きなスライディング窓が。
こちらは石川県の羽咋郡宝達志水町にある
森の窓というメーカーの製品です。
私たちが石川に住んでいるから
というのは勿論ありますが、
これだけ大きな木製の片引き
スライディング窓となると、
森の窓だろうなぁ…と見た瞬間に
想像するぐらいにはインパクトのある
サッシとなっています。
チェックしていきます。
サッシ周りはコーキングで
気密処理されています。
現場は基礎断熱となっており、
床下換気システム用の貫通部が
給気と排気の二箇所設けられています。
こちらはその貫通部を目張り
している状態なのですが…
防水の目的は果たせるでしょうが、
気密的にはOKとは言い難いですね。
具体的には緑○の箇所から
外気が室内へと侵入すると思われます。
(測定器で減圧した場合の話です。)
細かすぎでしょ。と思われる方も
いらっしゃるかもしれませんが、
気密というのはそれだけ繊細と
いう事なんです。
せっかく大工さんをはじめとした
現場に関わっている方々が
気密に配慮した施工をしていても、
目張り箇所に隙間が出来ていては
結局気密が悪くなってしまいますよね?
これを蔑ろにしてしまっては、
大工さん達の仕事を無碍にしてしまう
大変失礼な行為にあたります。
ですので、目張りは問題がないか
確認したのち、問題があれば
上からテープを貼り直すなりして
その後正確な気密を測定する。
これは本当に大切な事です。
目張りというのはスリーブなどの
貫通部だけではなく、
床から上がっている排水管なども
その対象となります。
こちらの現場では、
まだ床下から上がっておらず
隠れている排水管がありましたので、
床下に潜って目張りのチェックをしました。
仮にボイドテープが貼ってあっても、
端の方が浮いてしまって隙間があれば
意味はありませんので、
養生テープをひと巻きするなどして
補強する必要があります。
まだビス止めしていない床を
外してもらって基礎に潜ります。
これはコレは助かりますね~。
ってあぁ!またやってしまった…
さっきの画像を見れば分かると思いますが、
土台に青緑っぽい色が付いていましたよね?
アレは防蟻用の液体が染みているんです。
基礎断熱で防蟻処理の施された土台や
その液が垂れ落ちた基礎部分に
白いシャツなどが接触してしまうと、
このように色移りしてしまうんです。
先日他所の現場でもやらかした
ばかりなんですけどねぇ…
もう流石に学習したので、
三度目は無いようにします。
それでは一度測定をしてみましょう。
気になる結果は…
C値=0.64cm2/m2の高気密です。
表示は四捨五入により0.6cm2/m2。
C値改善作業(隙間埋め)を
していきます。
屋根の勾配と梁の端がかかる箇所。
頑張ってテープを貼ったのは
とても伝わってくるのですが、
少し漏気を起こしていました。
こちらは先程とは別の箇所ですが、
上手く貼れていない部分がありますね。
このとても狭い取り合い部分に
粘着力の高いテープを貼るというのは
本当に困難な事です。
こういった箇所は無理にテープのみで
処理しようとはせずに、
ウレタン等と組み合わせて処理すると
効率的に隙間を埋める事が出来ます。
こんな感じでしょうか。
以前、相性とか使い分けだとか
お伝えしたことがありますが、
要は臨機応変に組み合わせて
気密処理するのが重要です。
ウレタンのみでもテープのみでも
隙間が残ってしまうかもしれませんが、
その両方を合わせて使えば
隙間を残すことなく処理する事が可能です。
特に、こういった狭い箇所では、
ウレタンの性質上限られた空間で
シートと密着して押し広げるように
膨らんでいきますので、
隙間が埋まりやすいというだけでなく
通常よりも剥離を起こしにくくなる
という利点も考えられます。
組み合わせと使い分けを
臨機応変に行う事こそが、
気密を高め、経年劣化を抑えるための
有効的な手段なのです。
テープで気密処理を行う上で
気を付けなければならない点の
一つとして挙げられるのは、
こういった隅の処理方法です。
ウレタンやコーキングとは違い、
テープは隅などのカーブポイントの処理に弱いです。
適していないと言っても過言ではありません。
テープは二次元の処理に強いが
三次元の処理には弱いんです。
分かりやすく(?)言えば、
平面はピッチリ綺麗に貼れるので
処理がし易く向いているけれど、
凸凹しているような箇所では
浮きが出来やすく隙間が残ってしまいがち
いったところでしょうか。
とはいえ、この浮いてしまっている
箇所の表面にウレタンを吹き付けても、
いずれ剥離してしまう可能性が高いので、
新たにテープを上から貼って
気密処理を行いました。
追加でテープを貼って補強する際は、
このように何枚かに分けて面で貼れば
粘着力を活かし、浮きをつくる事も無く
処理する事が出来ます。
これでも完璧とは言い難いですが、
やっておいて損は無いはずです。
火打ちの留め具の上部。
テープが貼ってあるのですが、
かかりが浅いのか少し漏気を
起こしてしまっています。
こういった狭い箇所では
ありがちなケースかと思います。
ただ吹き付けるだけでも効果は
あると思いますが、
より効率的にミッチリと埋める
方法もあるんです。
上の画像のようにではなく…
このように留め具ように堀ってある
部分を隠すようにテープを貼って、
出口を限定しウレタンの行き場を減らします。
こうする事で、本来はモコモコと
膨らんで外にはみ出してしまう
はずだった分のウレタンが、
限られた空間の中で膨張する事により
隅までミッチリと埋めてくれるわけです。
とても効率的な処理なので
おススメなのですが、
あまり吹き付ける量が多いと
ウレタンが狭い出口からボトボトと
留まることなく落下し続けますので、
化生の床や柱などが汚れないように
注意してください。
それでは再度測定を始めます。
結果はいかに…
C値=0.55cm2/m2の高気密です。
表示は四捨五入により0.6cm2/m2。
αA (家全体の隙間面積)が
46cm2 → 39cm2
n値 (隙間特性値 範囲1~2)が
1.85 → 1.72
となっています。
改善前と比べると、
αA (家全体の隙間面積)も
7cm2 縮まって良くなっているのですが、
如何せんn値が大きいままなのが
気になってしまいますね。
という事は…
玄関ドアと掃き出しの片引きからの
漏気量が多いという事なのでしょうね。
実際に手を近づけて漏気のチェック
をしてみたところ、
かなりの漏気量となっていました。
先程の数値では、
どの程度気密に影響しているのか
分かりませんでしたので、
玄関ドアと掃き出し窓の二箇所を
目張りして確認を行います。
正式な測定結果としては
提出する事が出来ないのですが、
躯体と建具に分けた状態での
気密性を知っておくのは
とても良い事だと思います。
結果は…
C値=0.22cm2/m2の超高気密です。
表示は四捨五入により0.2cm2/m2。
αA (家全体の隙間面積)が
39cm2 → 16cm2
n値 (隙間特性値 範囲1~2)が
1.72 → 1.40
となっています。
この結果に、
立ち合いされた社長は
納得されたご様子でした。
今回はやはり、玄関ドアと
掃き出しのスライディング窓の
影響が大きかったようですね。
目張り前と後で比較してみると、
αA (家全体の隙間面積)と
n値 (隙間特性値 範囲1~2)が
格段に良くなっているのが見て分かります。
とはいえ、躯体自体の気密性が
ちゃんと取れているのは、
結果を見るに間違いありません。
スライディング窓に関しても
パッキンやモヘアなどを利用すれば
改善出来るかもしれませんので、
色々と策を講じてみるのもアリですよね。