富山県富山市で気密測定 2025/04/25
稜です。

2025年4月16日は富山県富山市で
㈱小椋建築さまの現場の
気密測定を行いました。

中に上がります。

壁の断熱材はグラスウール。
気密シート貼りの仕様です。

さらに外壁側に付加断熱として、
ミラーフォームラムダが
丁寧に貼ってありました。

屋根はウレタン吹き付け断熱と
なっています。

サッシはYKK APW430。
樹脂トリプルガラス仕様です。

チェックしていきます。
色的に見えづらいかも知れませんが、
サッシ周りはコーキングで
気密処理が施されていました。

スリーブの壁シート貫通部です。
貫通部を気密テープで補強し、
その上で伸張性の防水角部材で
丁寧に処理してありました。

こちらはCD管やPF管の壁シート貫通部。
一本ずつ間隔を空けて通して
いるのが分かりますかね?
これはCD管などに限った話ではなく
外気に通じる位置の貫通部は
ほぼ全てに同じ事が言えるのですが、
物と物が密接した状態だと
その間に狭い隙間が生じます。
この狭い隙間がとても厄介で、
ウレタンやコーキングで埋めようにも
物同士が密接してギュウギュウになっていると
その隙間に到達する事すら出来なかったり、
たとえ気密処理出来たとしても
綺麗に埋まってなかったりします。
そのため、厄介な隙間を作ることなく
綺麗かつ確実に隙間を埋められる
このやり方はとても理に適っています。

それでは測定を始めます。
気になる結果は…

C値=0.23cm2/m2の超高気密です。
表示は四捨五入により0.2cm2/m2。

C値改善作業(隙間埋め)
をしていきます。
現場は基礎断熱なのですが、
どうやらまだ立ち上がっていない
排水管が基礎内に隠れていて、
ボイドテープが浮いていた為
漏気を起こしていました。
排水管の目張りが効いていないと
下水の臭いが漂ってきますので
割かし直ぐに分かります。
しっかりと目張りを補強して
漏気を止めました。

こちらは床の合板の間の隙間と
壁の気密シートとの取り合い。
壁はこのシートの端などにテープを
貼って気密を確保している状態ですので、
このようにシートの内側に通じている
隙間が空いたままの状態だと漏気が発生します。
折角苦労してシートにテープを
貼って壁内の空気の移動を断っても、
このように逃げ道が残っていると
結局漏気してしまう訳です。

このような隙間はなるべく根元に
近い位置にウレタンやコーキングを
打って道を潰すに限ります。
シートを貼る前に潰しておくのも
全然アリなのですが、
結局は床まで下ろしたシートの端が
気密ラインになりますので、
位置を想定したうえで処理をしないと
意味を成さないので注意しましょう。

屋根の束付近に吹き付けてある
ウレタンに隙間が出来ています。
手を近づけて確認してみると、
漏気を起こしていました。

屋根の気密を確保する上で
一番楽なのは何かと問われたら
私はウレタン吹き付けと答えます。
気密シート貼りやボード状断熱材など
色々な断熱材や手法がありますが、
そのどれもがコーキングやテープ処理など
繊細かつ膨大な処理を求められるので、
その点で言えばウレタンに勝ることは
まず有り得ないでしょう。
かと言って、ウレタン吹き付けならば
完璧に気密を確保出来るのかと言われると、
こちらも人の手で処理を施している手前
そう簡単にはいきません。
勿論、吹き付け作業をする方の
経験や技量にもよる所はありますが、
束柱や火打ち梁、吊木周りなど
外気に通じる隙間が残りやすい
箇所がいくつかありますので、
それらをチェックし、カバーする事が
気密を良くする上で重要な工程です。

玄関ドア横の配線貫通部。
コーキングで気密処理してありますが、
よ~く見てみると怪しげな隙間が
出来てしまっていますね。
チェックしてみたところ
少しだけ漏気していました。

ウレタンを吹き付けて隙間を埋めました。
このような怪しげな隙間は
現場を見回っていると何度も見かけます。
が、その全てが漏気を起こす
という訳ではありません。
普通はどれが漏気を起こす隙間で
どれがそうでない隙間かなんて
判別する事は出来ませんので、
確実に気密を良くするためには
怪しい隙間を全て埋める他ありません。
ですが、それでは時間も手間も
気密材も無駄にかかってしまいます。
ただし気密測定の際中であれば、
実際に漏気の有無で隙間が外気に
通じているか判別がつくので、
効率良く隙間を埋められる訳です。

梁のホールダウン金物の座金。
コレがシートに掛かっている為、
先程の合板の隙間と同様に
漏気を起こしてしまっています。

正直これには私もビックリ。
あまり体験したことのないパターンの
隙間でしたので勉強になりました。
空いている隙間にウレタンを
詰め込んで気密処理しました。

壁の気密シートを見回っていると、
表面のフィルムが切れてしまって
いる箇所を発見しました。
漏気が起きていましたので
気密処理をしたいのですが、
テープを使うことが出来ないので
どうやって処理するか思考中。

悩んだ結果、ウレタンを吹いて
気密を確保する事にしました。
このウレタンもただ適当に
吹き付けるのではでなく、
シート表面に密着するように
気を払いながら処理をしました。
いやいや、何でテープ使わんの?
付近もテープ使って処理してあるやん。
と、お思いになった方もいるでしょう。
ですが、本当に使うことが出来ないのです。
何故ならば、シートの表面に
ウレタンの飛沫が大量に付着
してしまっているからです。
こうなるともう、テープは
全く貼り付いてくれなくなります。

丁度、分かりやすい例があったので
こちらを見て頂きたいのですが、
シートの端を留めるテープが
ペロンと剥がれてしまっています。
よく見てください。
上の方に貼ってあるテープは
テープの表面にウレタンの飛沫が
付着していますよね?
ただし、下の方のテープは
接着させたい位置のシートの面に
ウレタンの飛沫が付着しています。
ですので、テープで処理してある箇所は
ウレタン吹き付け前後の違いがある訳です。
本来シートの表面に接着させたいテープが、
シートの表面に付着したウレタンの飛沫に
粘着力を奪われてしまっています。
そして、粘着力を奪ったウレタンの
飛沫がシート表面から剥離して、
結果的にテープもペロンと剥がれる
という流れになっているんです。

なら、表面に付いた飛沫を払って
綺麗にしてからテープを貼れば
問題ないんじゃないかを思うかも
知れませんがそうは問屋が卸しません。
飛沫、とは言いましたがなにも
大きな粒だけが付いているのではなく、
シート表面をコーティングするかのように
薄いウレタンの膜やカスで覆われて
しまっている状態なんです。
この膜やカスを綺麗に取り除くのは
非常に困難な事ですので、
綺麗にテープを貼るのはまず不可能。
そのためこのようにウレタンで
気密処理する他無いわけです。
ちなみにコーキングで処理する事も
出来なくもないと思いますが、
気密材には相性というものがあるので
ウレタンにはウレタンを重ねるのが
一番剥離を起こしにくい処理だと思います。


小椋社長に聞いてみたところ、
壁のシートは専門の業者の方が
施工されているとの事でした。
それがウレタン吹付業者の方と
施行のタイミングが重なった結果、
このような状態になったのかも
しれませんね。
とはいえ、このように吹き付け後に
テープを貼ってある箇所はごく僅か
でしたので、他は問題無いでしょう。
気密材の相性と処理の順序。
これも気密を良くするために
重要な要素の一つです。
それでは再度測定を始めます。
結果はいかに…

C値=0.15cm2/m2の超高気密です。
表示は四捨五入により0.2cm2/m2。
αA (家全体の隙間面積)が
33cm2 → 21cm2
n値 (隙間特性値 範囲1~2)が
1.35 → 1.07
となっています。

この結果に、
立ち合いされた小椋社長は
納得されたご様子でした。
αA (家全体の隙間面積)は
12cm2 の改善ですね。
n値 (隙間特性値 範囲1~2)も
とても良くなっていると思います。
基礎内の排水管の目張りが浮いて
いたのも影響しているでしょうが、
今回改善作業を行った箇所は
割かし漏気の多い印象でしたので、
埋めた分がキッチリと仕事を
してくれたのだと思います。
何はともあれ、とても良い気密。
これで床下エアコンまで付く
との事でしたので、
暖かく快適な家になる事
間違いなしですね。